compounded things

Japanese translation: (すべての)事象

19:28 Nov 5, 2011
English to Japanese translations [PRO]
Art/Literary - Religion
English term or phrase: compounded things
Chaos is inherent in all compounded things. Strive on with diligence.

これは釈迦が言った言葉です。

ここでの compounded things に当たる言葉を探しています。

辞書では混ぜ合わせてできた物、という意味ですがこの訳に当てはめられるいい言葉が見つかりません。

私の訳は、「全ての物は混沌としている。勤勉に努力すべし。」です。全ての物というのは、物質と人間を指しているつもりです。

この訳は入れ墨に使うので、他の翻訳者の方からお知恵をお借りしたいと思っています。

よろしくお願いいたします。
Naomi Uchida
United States
Local time: 22:21
Japanese translation:(すべての)事象
Explanation:

これはブッダが亡くなる直前の最後の言葉として知られています。原文は、パーリ語聖典では Dīgha Nikāya の Mahāpaninibbāna Suttanta にあります。質問の文は、パーリ語では vayadhammā saṅkhārā appamādena sampādetha です。

英訳で言う Chaos is inherent in all compounded things ですが、これは誤訳で、vaya (サンスクリット語は vyaya )は decay つまり減衰や衰退という意味ですので 'chaos' は間違いです。複合語後部の dhamma は「〜の性質をもつ」という意味です。

問題の saṅkhārā 'compounded things' ですが、ブッダの教えでは、例えば意識という概念を考えた場合、「『意識』なるものは存在するか否か」というように、物事は存在論的にとらえるべきものではなく、「『意識』なるものは*いかに/どのように*機能するのか」というように、物事は*プロセスとして*とらえるべきものだとされています。この「プロセスされたもの」が saṅkhāra なのです。ブッダの教えを系統化した後のアビダルマでは、宗教的なゴールである nirvāṇa (パーリ語 nibbāna つまり「涅槃」)以外すべての「物事」(外的物質、思考の対象を含むすべての「物」)は saṅkhāra (saṅkhārā は複数形) であると定義されています。というわけで、saṅkhāra には重要かつ表現が非常に難しい思想が内包されており、この語を漢字の定訳を使わずに翻訳するのは研究者にとってさえも難しいものなのです。ただし、定義上 saṅkhārā は涅槃以外のすべての物事を指すという理由から、単に「現象」、「事象」と訳されることがよくあります。

ちなみに中村元の現代語訳では、この文は「 もろもろの事象は過ぎ去るものである。 怠ることなく修行を完成なさい 」 (『ブッダ最後の旅』 中村元訳 岩波文庫)となっています。

文の意味なら上記のように説明できますが、しかし「入れ墨に使う文」となるとどのようなスタイルで訳したらいいのでしょう。漢訳でも使いますか?確かこの文は上座部(パーリ語聖典に対応する漢訳)の経典には含まれていないので、そうすると全く別の大乗仏典の大般涅槃經(だいはつねはんぎょう)を参照しなければならないかもしれません。私の推測では、Saṅkhārā の日本語(漢字)の定訳は「行」で、似た表現では「諸行無常」という有名な言葉があります。この場合の「諸行」は sabbe saṅkhārā (すべての行)を訳したものですので、ご質問の文の意訳として「すべての」も含めるなら「諸行」でもよいでしょう。vayadhammā は「滅法」でしょうか。

http://ja.wikipedia.org/wiki/諸行無常

入れ墨に使える訳は提案できませんが、ご参考にしていただければ幸いです。

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Note added at 19 hrs (2011-11-06 15:22:54 GMT)
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Mahāpaninibbāna Suttanta > Read Mahāparinibbāna Suttanta
Selected response from:

Tomoyuki Kono
United Kingdom
Local time: 06:21
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こんなに詳しい説明をしていただけるとは、まったく予想していませんでした。ほんとうにありがとうございます。
訳書に関する情報も、とても有難いです。
刺青用なので、全部漢字がいいのかと聞いたら日本語らしくかなを入れてもよいとのことでした。訳は本で訳されていることばを基本として刺青用に調整して、いくつか提案することにしました。
貴重なお時間をいただいて、感謝いたします。
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Summary of answers provided
5 +2(すべての)事象
Tomoyuki Kono
2森羅万象
Hiroshi Kanamura
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蛇足かもしれませんが
Benshin

  

Answers


4 hrs   confidence: Answerer confidence 2/5Answerer confidence 2/5
森羅万象


Explanation:
あまり自身がないのですが、カオス、コスモスとくれば森羅万象じゃないでしょうか。宇宙に存在するすべての者(物)。


Hiroshi Kanamura
Japan
Local time: 14:21
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Asker: それも訳の候補として入れさせていただきました。ありがとうございます。

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17 hrs   confidence: Answerer confidence 5/5 peer agreement (net): +2
(すべての)事象


Explanation:

これはブッダが亡くなる直前の最後の言葉として知られています。原文は、パーリ語聖典では Dīgha Nikāya の Mahāpaninibbāna Suttanta にあります。質問の文は、パーリ語では vayadhammā saṅkhārā appamādena sampādetha です。

英訳で言う Chaos is inherent in all compounded things ですが、これは誤訳で、vaya (サンスクリット語は vyaya )は decay つまり減衰や衰退という意味ですので 'chaos' は間違いです。複合語後部の dhamma は「〜の性質をもつ」という意味です。

問題の saṅkhārā 'compounded things' ですが、ブッダの教えでは、例えば意識という概念を考えた場合、「『意識』なるものは存在するか否か」というように、物事は存在論的にとらえるべきものではなく、「『意識』なるものは*いかに/どのように*機能するのか」というように、物事は*プロセスとして*とらえるべきものだとされています。この「プロセスされたもの」が saṅkhāra なのです。ブッダの教えを系統化した後のアビダルマでは、宗教的なゴールである nirvāṇa (パーリ語 nibbāna つまり「涅槃」)以外すべての「物事」(外的物質、思考の対象を含むすべての「物」)は saṅkhāra (saṅkhārā は複数形) であると定義されています。というわけで、saṅkhāra には重要かつ表現が非常に難しい思想が内包されており、この語を漢字の定訳を使わずに翻訳するのは研究者にとってさえも難しいものなのです。ただし、定義上 saṅkhārā は涅槃以外のすべての物事を指すという理由から、単に「現象」、「事象」と訳されることがよくあります。

ちなみに中村元の現代語訳では、この文は「 もろもろの事象は過ぎ去るものである。 怠ることなく修行を完成なさい 」 (『ブッダ最後の旅』 中村元訳 岩波文庫)となっています。

文の意味なら上記のように説明できますが、しかし「入れ墨に使う文」となるとどのようなスタイルで訳したらいいのでしょう。漢訳でも使いますか?確かこの文は上座部(パーリ語聖典に対応する漢訳)の経典には含まれていないので、そうすると全く別の大乗仏典の大般涅槃經(だいはつねはんぎょう)を参照しなければならないかもしれません。私の推測では、Saṅkhārā の日本語(漢字)の定訳は「行」で、似た表現では「諸行無常」という有名な言葉があります。この場合の「諸行」は sabbe saṅkhārā (すべての行)を訳したものですので、ご質問の文の意訳として「すべての」も含めるなら「諸行」でもよいでしょう。vayadhammā は「滅法」でしょうか。

http://ja.wikipedia.org/wiki/諸行無常

入れ墨に使える訳は提案できませんが、ご参考にしていただければ幸いです。

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Note added at 19 hrs (2011-11-06 15:22:54 GMT)
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Mahāpaninibbāna Suttanta > Read Mahāparinibbāna Suttanta


    Reference: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%88%AC%E6%B6%85%E6%...
Tomoyuki Kono
United Kingdom
Local time: 06:21
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こんなに詳しい説明をしていただけるとは、まったく予想していませんでした。ほんとうにありがとうございます。
訳書に関する情報も、とても有難いです。
刺青用なので、全部漢字がいいのかと聞いたら日本語らしくかなを入れてもよいとのことでした。訳は本で訳されていることばを基本として刺青用に調整して、いくつか提案することにしました。
貴重なお時間をいただいて、感謝いたします。

Peer comments on this answer (and responses from the answerer)
agree  Benshin: ネットで調べても、いつ仏陀が語った言葉なのかわからなかったので、助かりました。
6 hrs
  -> ありがとうございます。自分の専門分野での質問はめったにないので、ちょっとはりきりすぎたかもしれません。

agree  Yasutomo Kanazawa: 自分の専門分野の質問だったりするとはりきりすぎる気持ちよく分ります。^^
19 hrs
  -> ありがとうございます
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23 hrs peer agreement (net): +1
Reference: 蛇足かもしれませんが

Reference information:
ドイツの仏教学者であるベックが著わした『仏教(上)』(岩波文庫、渡辺照宏訳)には、パーリ語聖典『マハーパリニッバーナ・スッタ』第3章のなかの仏陀が入滅前に弟子達に語った言葉として、以下の記述があります。

「生存の構成力の本性は無常である。つねに怠りなく務めるがよい」

Digital Dictionary of Buddhismというサイトで"all compounded things"を検索すると「一切行」と出てきました。以下がそのページのURLですが、このサイトに入るには、userID に"guest"と入力してログインする必要があります。

http://buddhism-dict.net/cgi-bin/xpr-ddb.pl?q=一切行

以下のページでは、のP'angさんという回答者が、Konoさん同様にchaosは誤訳であると指摘しています。但し、P'angさんはsufferingが正しいといっています。

http://in.answers.yahoo.com/question/index?qid=2009091710344...

Chaos is inherent in all compounded thingsの部分について、私が『仏教(上)』と『ブッダ最後の旅』の訳から思い浮かべたのは「諸行無常」という言葉です。一方、P'angさんの説明からは「一切行苦」あるいは「一切皆苦」を連想しました。しかしもちろん、「無常」も「苦」も英語のchaosとは意味が異なります。

入れ墨を入れる人がなぜこの言葉を選んだのかが重要であると思います。

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Note added at 23 hrs (2011-11-06 19:25:08 GMT)
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修正です。

のP'angさんという回答者が → P'angさんという回答者が

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Note added at 1 day10 hrs (2011-11-07 06:11:31 GMT)
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もう1点修正です。

つねに怠りなく務めるがよい → つねに怠りなく努めるがよい

Benshin
Japan
Native speaker of: Japanese
Note to reference poster
Asker: お知恵を分けていただいて、ありがとうございます。 大変参考になりました。


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agree  Tomoyuki Kono: 一切(英:all パーリ:sabbe)の意です。同じ経中でも行(saṅkhārā)あるいは諸行(sabbe saṅkhārā)は無常 (anicca) または苦(dukkha)であるという文があります。例えば aniccā vata saṅkhārā uppāda-vaya-dhammino (行はすべて無常であり、生じては滅する性質のものである)など。無常も苦も初期仏教では重要な教えで、行をこのように表現する同様の文が多数の経典にあります。ただし質問の文ではvayadhammāが述語になっています。
51 mins
  -> 有り難うございます。私はパーリ語もサンスクリット語も門外漢ですが、Konoさんの回答を大変興味深く拝読いたしました。自分の専門分野になればなるほど翻訳は難しく、かつやり甲斐があるものになるような気がします。
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